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シルクテクスチャ

短歌

枯れ寒陽 
時空薄れる 冬渚 
君の面影 過ぎし想いと

 小桜貝(滝ノ上)

〇もう悲しみすら覚えない。それが悲しい。

ひめ蛍 
想い初めしも  水無月に 
催涙雨受く  胸の山百合

 河風(滝ノ上)

〇七月七日の七夕に降ってしまう雨を『催涙雨』と言うそうです。まだ水無月なのに、心騒ぎ、もう涙に濡れてしまっている、初めてのときめき。

夢逢瀬 
頬ふれそよぐ  絹髪の 
あわき残り香  記憶とどめむ

紅香 (滝ノ上)

​〇忘れたくない。それがたとえ夢でも。きっと実現しえない秘めた想いだから。

みなみひに 
うすれ消えゆく  春雪か 
名残いと惜し  二人ぬくもり

紅香 (滝ノ上)

​〇春の陽は暖かく、でも、消えゆくものもあるのです。

きまぐれた  昨日笑むとも 
まばたきの  上に漂う 
今日のつれなさ

えびてなが (滝ノ上)

​〇「たきのうえ」を、二回詠み込んでいます。

夜半の影
河鹿な鳴きそ  覚めぬれば
つきぬ想ひぞ  たまと流るる

紅香 (滝ノ上)

​〇この文化祭内の短編小説「いつか聞いた 特別な瀧のこと」に添える短歌です。多摩川のせせらぎには、あのときの想いが今も。

ぬれもみじ
ふみぞながさむ  ゆれみなも
たにのわたりか  ひとぞこひしき

えびてなが(滝ノ上)

​〇おさえてもこぼれる涙に濡れながら、あの人への文(手紙)を手に、濡れそぼったもみじを踏みつつ谷へ向かう細道を川辺まで降りていくと、そこで揺れていたのは水面でしょうか。私の心でしょうか。届くはずもない、水の底に消してしまったほうがいいかもしれない想いを、流れに託します。ふと顔を上げると、谷風が紅葉の木々の間を抜け、あなたの香りを運んでくる気がします。やまどりは、雌雄が峰を隔てて別々に寝るといわれていますね。瀬を越えて渡る谷風にまで離れたあなたの気配を感じてしまうほど、私は恋しく思っているのです。

蔓の葉も

赤黄冴え濡る  秋雨に 

心つのれど  ひとり想いは

無想風(滝ノ上)

〇釜の淵公園北向い斜面に繁る背の高い竹に絡みついた数多の蔓の葉も、片恋の心を映すように秋雨に濡れていました。

春遠く

夏の忘れ路  秋の瀬に

しかとみそぎし  もみじ恋しき

無想風 (滝ノ上)

〇いつしか気がつく季節の流れ。多摩川はいつも変わらず流れているのに。 
 裏テーマ:味噌仕立てのもみじ(鹿)鍋は美味いよな~。また食べたいなあ。

釜の淵

夏のはなやぎ  空耳に

夕日  岩陰  さざえ染めつつ

無想風 (滝ノ上)

〇夏のにぎわいの名残でしょうか。釜の淵公園の南側の河原で、低くなりかけた秋の陽に、サザエの殻が染まっています。

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